2011-06-30

DIVE!! <下> / 森絵都

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DIVE!!〈下〉 (角川文庫)
森 絵都
角川書店 2006-05-25
評価

感想

四部、オリンピック代表を賭けた選考会の様子が綴られる。ページを捲るのが怖かった。

主役級の少年は3人いるけれど、主人公は彼らだけじゃない。コーチ達や友達、家族、恋人も主人公だった。十人十色の過去があり、思いがあり、頑張りがあり、決意があった。だから読者の私は誰か一人だけに肩入れできず、でも飛込みは個人競技。辛い。ええい、どうにかならんのか!とギリギリしながら読んだ。(笑)

選考会最後の最後のジャンプ。3人の少年がそれぞれ飛び立つ瞬間の描写が描かれる。要一は身体中の筋肉をチェックする。飛沫は白鳥を思う。知季は心から楽しんで、飛ぶ。ここを読んで、それだけでとても気持よかった。誰がオリンピックに行くんだとかどうでもよくなった気がした。 

少年たちからパワーと勇気と元気をもらった気がする。読んでよかった!

角川文庫の夏のフェアに入ってる本なので、読んでみるといいかも~♪丁度夏だし、オススメです。ストラップ貰えたりするみたい。私貰えなかった…(´;ω;`)

引用

「どうかしてたよ」
 長い眠りからたたきおこされたかのようだった。要一はすくっと立ちあがり、大股で勉強机へ歩みよると、気合いを入れて胡蝶蘭の鉢を両手に抱え上げた。
「敵に花を贈るなんてばかげてるし、王子様は一人で十分だ。こいつはやっぱり持って帰る」(P98

「それでも人は見たいんだよ、人間の能力の極限を。たとえ世界が変わらなくたって、腹の足しにもならなくたってさ」
 コーチの大島が三人を順にながめながら言った。
「お前らだって見たいだろ。より早く走る人間を、より高く飛ぶ人間を、より美しく舞う人間を、さ。新記録なんざでようもんなら無条件に血が騒ぐ。興奮するし、感動する。大食い選手権でさえ目頭が熱くなる。限界への挑戦ってのは、たぶん人類のDNAに組みこまれてるんだろうな。人は、人を試したいんだ。スポーツ以外の世界にだって、特殊な薬品や道具を使って何かを試したがってるやつらがごまんといる。おまえらなんて健全なもんだよ。ヘルシーワールドの伝道師として、堂々と飛べばいい」(P175

「逆転が不可能だなんて片時も思ったことありませんから」
 さっき夏陽子へうそぶいた言葉がむなしく耳をかすめていく。
 自分がくずれれば、みんなが動揺する。みんなの前ではあくまで平静を保たなければならない。この期に及んでもなお、MDCのリーダーであろうとしている自分が、要一にはうざったくも滑稽でもあった。
「要はスイッチの問題だ」
 どこにスイッチがあるんだよ。
「今、戦闘モードをONにした」
 おれの嫌いな精神論じゃねーか。
「フロリダの話をきいて、こっちまでやる気がでてきたよ」
 やる気だけで勝てるなら敗者は存在しない。
 本音を言えば、こうだった。
「もういやだ。何もかも投げだしたい。このままここで寝ていたい。」(P303


これ、映画にもなってたんだね。YouTubeにあった予告動画みたいなのはっておきます。今度見よ~。

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