- 星の王子さま (角川文庫)
- サン・テグジュペリ 管 啓次郎
- 角川書店(角川グループパブリッシング) 2011-06-23
- 評価
- 角川書店(角川グループパブリッシング) 2011-06-23
感想
元々私は星の王子さまのアニメ版を繰り返し見ていました。幼稚園に入る前の頃にビデオを買ってもらっていて、それが大好きだったのです。それで原作の小説もずっと気になっていたんですが、今回やっと読了いたしました。
実際に読んでみると、とてもよかったです。ほんの数時間で読み終わりました。挿絵もかわいらしい。最初から最後まで構成が緻密に練られているんですね。最後の方はぞくぞくしちゃいました。サン=テグジュペリさん、やりよる!
この本は子どもと、子どもの気持ちを忘れてしまった大人が対比されてよく出てきます。でも子どもの気持ちを忘れることが良いとか悪いとかではなくて、ただ「大人はそういうこと」「そういう大人がいる」として描かれているような気がします(もう一度読まないと確信持てませんが)。
王子さまは自分の小さな星に育った薔薇の花とケンカをして旅に出ます。いくつかの星を回り、そこの住人(大人の象徴)と出会い、大人って変だなぁと感想を抱きながら最後に地球にやってきます。そして飛行機が故障して動けないでいる「ぼく」と砂漠で出会います。王子さまは完全な子どもとして描かれ、「ぼく」は子どもの気持ちを忘れていない大人として描かれていたと思います。
王子さまの一人称が「おれ」だったので最初は少し生意気な子どもに思えちゃいましたが、読んでいくと、そうではない。20~21章が好きです。バラ園の薔薇を見かけたシーンとキツネのシーン。王子さまの心にはずっと彼の薔薇の存在があったんですね。それが優しくて、一途でした。薔薇とのお別れのシーンもグッときますよ。薔薇もかわいいしね。
そして最後。もう寂しくて寂しくて仕方がない。でも、王子さまは「ぼく」だけじゃなくて読者の私にも贈り物を残してくれました。
「おまえが夜に星を見上げるとね、その星のひとつにおれが住んでいるせいで、その星のひとつでおれが笑っているせいで、おまえにとってはまるですべての星が笑っているように思えるはずだよ。笑う星たちを手に入れるわけさ!」(P139)
可能性なのかな。夢かもしれない。夜空の星の中に、もし王子さまの星があったら…。そこで王子さまが笑ってると思ったらなんだか幸せな気持ちになるね。それに、自分には同じに見える多くのものが、別の人にはその人だけの大切なものだったりするんだよね。それってワクワクにも繋がると思う。一体誰がどんな想いを持ってる?って。王子さま、素敵な贈り物をありがとう。
今度ぜひ違う翻訳者のバージョンも読んでみたい。
引用
「ある日にはね、おれは太陽が沈むところを四十四回見たよ!」
そして少しあとで、こうつづけた。
「あのさ……すごくさびしいときって、太陽が沈むところが好きになるよね……」
「四十四回見た日って、そんなにさびしかったの?」
ちび王子は答えなかった。(P37)
「なんで呑むの?」とちび王子はたずねた。
「忘れるためさ」と大酒呑みが答えた。
「何を忘れるために?」とすでに彼のことがかわいそうになりながら、ちび王子が知りたがった。
「恥ずかしいってことを忘れたいのさ」と大酒呑みはうなだれていった。
「何が恥ずかしい?」と彼を助けてやりたいと思ったちび王子は訊いた。
「呑むのが恥ずかしいのさ!」と大酒飲みはきっぱりといって、じっと黙りこんでしまった。(P68)
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